ヒトトヒトHD、警備大手SPD&Companyを子会社化 ―北関東エリア開拓と人材稼働率向上を狙う

M&Aの概要

スポーツイベント警備や施設運営管理を手がけるヒトトヒトホールディングス株式会社(東証スタンダード、証券コード:549A)は2026年7月16日、警備業を営むSPD株式会社の持株会社であるSPD&Company株式会社(本社:東京都渋谷区)の全株式750株を取得し、子会社化すると発表した。

株式取得額は30億3,000万円、アドバイザリー費用等を含めた取得価額は総額31億6,000万円。株式譲渡契約の締結日は2026年7月16日、譲渡実行日は同年7月31日を予定していた。

その後、予定通り7月31日にSPD&Companyの株式取得による子会社化を完了。同時に、取得資金として総額30億円の借入を実行したことも発表されている。新株発行など株式の希薄化を避け、借入による資金調達で警備事業の拡大を図った形だ。SPD&Companyの100%子会社であるSPDも連結子会社となり、2027年3月期第2四半期から連結決算に反映される見通しとなっている。

買収対象:SPD&Company/SPDとはどんな会社か

  • 持株会社:SPD&Company株式会社(本社:東京都渋谷区)
  • 事業子会社:SPD株式会社(警備業を主体とする人材サービス会社、SPD&Companyの100%子会社)
  • 主な事業エリア:埼玉県を中心とする北関東エリア(埼玉・群馬・栃木に営業拠点)
  • 事業内容:オフィスビル、商業施設、スポーツ関連施設などの常駐警備の受託

SPDは直近3年間、受託物件数と売上高がともに増加基調にあり、顧客との契約継続率は9割を超える。3,000人超の人材プールを保有し、常駐警備を主体とすることで売上の季節変動が少ない安定した収益基盤を持つことが特徴だ。

業績(子会社化前)

項目SPD&Company(2026年2月期)SPD(2026年3月期)
売上高2億8,700万円83億2,300万円
営業利益▲500万円(営業損失)1億5,700万円
純資産2億3,700万円7億8,900万円

持株会社であるSPD&Company単体は営業損失を計上しているが、事業実態を持つ子会社のSPDは売上高83億円超、営業利益1億5,700万円超と、安定した収益を上げていることが分かる。

買収側:ヒトトヒトホールディングスとはどんな会社か

ヒトトヒトホールディングスは、東京都渋谷区に本社を置く警備・ビル運営管理会社で、2026年3月に東京証券取引所に新規上場したばかりの企業である。イベントマネジメント事業、ビルマネジメント事業、人財サポート事業の3領域を主力としており、オフィスビルや商業施設、スポーツ施設などの警備・運営管理のほか、チケット販売、誘導案内、清掃、交通誘導、ホールスタッフの派遣など幅広い業務を手がける。

同社は野球殿堂入りしたプロ野球選手・松井秀喜氏を「ヒトのチカラ アンバサダー」として起用していることでも知られる。松井氏と、ヒトトヒトホールディングス代表取締役グループCEOを務める松本哲裕氏は、星稜高校時代のチームメートという間柄だ。

買収の狙い:人材プールの融合と北関東エリアの開拓

今回の子会社化の主目的は、既存事業の補完にある。ヒトトヒトHDはこれまでプロ野球など大型スポーツイベントの警備・運営を強みとしてきたが、こうした業務は季節変動や繁閑差が大きいという課題を抱えていた。一方のSPDは、オフィスビルなどの常駐警備を主力とし、季節変動の少ない安定収益を強みとしている。両社の事業特性は互いに補完関係にあり、統合によるシナジーが期待される。

狙いは大きく3点に整理できる。

1. 人材プールの融合による稼働率向上

ヒトトヒトHDが保有する1万2,000人超の人材プールと、SPDが保有する3,000人超の人材プールを融合。顧客の繁閑に応じて人材を相互に供給し合うことで、グループ全体の人材稼働率向上と収益拡大を図る。人手不足が続く警備・人材業界において、アルバイト人材などの定着率向上は収益拡大に欠かせない要素であり、今回の統合はこの課題への対応策としても位置づけられる。

2. 北関東エリアへの事業拡大

SPDはヒトトヒトHDが従来手薄だった埼玉県・群馬県・栃木県に営業拠点と顧客網を持つ。ヒトトヒトHD側がイベント管理や人材派遣のノウハウを提供することで、北関東エリアでの新規顧客獲得を目指す。これにより、関東全域での事業基盤強化にもつながる見通しだ。

3. サービス領域の拡大

イベント警備を中心としてきたヒトトヒトHDに対し、SPDが手がけるオフィスビル・商業施設向けの常駐警備を組み合わせることで、グループとして提供できるサービス領域そのものを拡大する狙いもある。

まとめ

今回のM&Aは、2026年3月に上場したばかりのヒトトヒトホールディングスが、借入による資金調達という株式希薄化を避けた手法で、警備業界における事業領域とエリアの両面を一気に拡大した事例といえる。イベント警備という季節変動の大きい事業に、常駐警備という安定収益源を組み合わせることで、グループ全体の収益基盤の平準化・強化を図る狙いが明確に読み取れる。2027年3月期第2四半期以降、SPDの連結効果がヒトトヒトHDの業績にどう反映されるか、続報にも注目したい。


出所・参考記事

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