「連続的な非連続な成長」とは何か ―GENDAの連続M&A戦略を数字で読み解く

GENDAという会社

株式会社GENDA(東証グロース、証券コード:9166)は、「GiGO」ブランドのアミューズメント施設運営を主力に、2040年に「世界一のエンターテイメント企業になる」というビジョンを掲げる企業だ。代表取締役会長の片岡尚氏が2018年にイオンファンタジーを退社して創業し、以来「連続的な非連続な成長(Serial Non-linear Growth)」を掲げ、驚異的なペースでM&Aを重ねてきた。

2026年1月期第3四半期(2025年2月〜10月)だけで19件のM&Aを実行し、連結子会社数は前期末から11社増の41社に達している。今回は、そんなGENDAの成長を支える主要なM&A案件を、公表されている数値とともに振り返ってみたい。

全社業績:急拡大する売上と、あえて減益を許容する経営

まずはGENDA全体の業績を見ておこう。2026年1月期(2025年2月〜2026年1月)の連結業績は以下の通り。

項目2026年1月期実績前期比
売上高1,707億8,700万円+52.7%
調整後EBITDA228億3,900万円+48.6%
調整後営業利益133億4,500万円+27.2%

さらに2027年1月期の会社予想は、売上高2,150億円、調整後EBITDA300億円、のれん償却前当期純利益106億円へと上方修正されている。

興味深いのは、GENDAが会計上のGAAP営業利益・純利益をあえて重視しない経営方針を明確にしている点だ。M&A関連費用(仲介手数料、DD費用、FA費用等)やのれん償却費を差し引く前の「調整後EBITDA」を経営の実力値として開示する一方、GAAPベースの営業利益は買収を重ねるほど一時的に押し下げられる構造になっている。実際、2026年1月期第3四半期累計では、売上高が前年同期比54.0%増となった一方、GAAP営業利益は同9.0%減という「増収減益」の決算となった。これは業績が悪化しているのではなく、それだけ活発にM&Aを行った結果と言える。

なお、資金調達の面でも方針転換があった。これまで2度実施してきた「M&A待機資金目的の公募増資」を、今後は最低3年間は行わないと宣言。既存事業が生み出すフリーキャッシュフロー(2027年1月期は50億円創出を目標)と借入を活用する方針へと転換している。

主要M&A案件を数字で振り返る

1. セガ エンタテインメント(2020年)―すべての始まりは「0円」買収

GENDAの快進撃の原点となったのが、2020年のセガ エンタテインメント買収だ。新型コロナウイルスの影響で、セガエンタテインメントは2020年3月期に約9億円の最終赤字、2021年3月期第1四半期には約27億円の赤字を計上。セガサミーホールディングスはゲームセンター事業からの撤退を決断し、当時売上高406億円・営業利益1億7,800万円・純資産188億円だったセガエンタテインメント株式の85.1%を、なんと譲渡価格0円でGENDA(当時:ミダスエンターテイメント)へ譲渡した。

一方でセガサミーHD側は、店舗の固定資産を回収可能価額まで減額したことなどにより、2021年3月期に200億円の特別損失(構造改革費用)を計上している。コロナ禍という異常事態の中で成立したこの「0円買収」が、GENDAを一躍業界大手へと押し上げる転機となった。セガエンタテインメントはその後「GiGO」ブランドへと生まれ変わり、現在もGENDAの国内事業の中核を担っている。

2. National Entertainment Network(2024年)―約48億円で北米約8,000拠点を獲得

米国でスタッフ常駐なしの小型ゲームコーナー「ミニロケ」事業を展開するNational Entertainment Network(NEN、Claw Holdings傘下)の全持分を、**取得価額 概算3,100万米ドル(約48億7,500万円)**で取得。NENは全米約8,000箇所のミニロケを展開する大手オペレーターで、当時の売上高は約1億米ドル、償却前営業利益は約800万米ドルだった。WalmartやKroger、Denny’sなど米大手小売・外食チェーンとの取引網を持ち、この買収によりGENDAグループのミニロケ拠点網は一気に拡大した。

3. Player One(2025年)―GENDA史上最大、約260億円買収

2025年4月に発表されたPlayer One Amusement Group(持株会社:Pixel Intermediate Holding Corporation)の買収は、GENDA史上最大規模の案件となった。アドバイザリー費用等を含めた取得総額は260億1,600万円(US$170 million規模)。

Player Oneは1975年創業、北米でゲームセンター104店舗・ミニロケ約2,000箇所を運営する北米最大級のアミューズメントグループで、AMCエンターテイメントをはじめとする大手映画館チェーンとの長期取引を持つ。買収対象企業の直近EBITDAは1,820万米ドルで、GENDAは中期的に3,500万米ドルへの成長を計画しているという。この買収により、2027年1月期のGENDAグループ北米売上高は単純合算ベースで約300百万米ドル(約440億円)規模となり、グループ全体に占める北米売上比率は約25%に達する見込みだ。買収資金の大部分は借入で賄われ、資本効率(Cash ROIC)は中期的に約15%を維持する計画とされる。

4. アクトプロ(2024年12月)―外貨両替機事業「SMART EXCHANGE」を約15.7億円+株式交換で取得

2024年12月24日、GENDAは外貨両替機事業「SMART EXCHANGE」を運営するアクトプロ(東京都港区、2010年設立)の完全子会社化を発表した。アクトプロの当時の業績は売上高31億9,000万円、営業利益3億9,300万円、純資産7億2,500万円

取得スキームは2段階で構成されている。まず発行済株式の29.3%(14万6,446株)を現金対価15億7,400万円で取得。その後、簡易株式交換によって残る株式を取得し完全子会社化する仕組みで、株式交換比率はGENDA1株:アクトプロ3.94株、GENDAは新株139万3,002株を割り当てた。株式取得の完了予定日は2025年3月3日とされた。

なお、アクトプロは子会社化に先立ち、外貨両替機事業以外の不動産事業・M&Aコンサルティング事業などを新設会社「アクトプロホールディングス」に吸収分割の形で承継させたうえで、外貨両替機事業のみを残した会社としてGENDA傘下に入るというスキームが取られている。

アクトプロが展開する「SMART EXCHANGE」は、10カ国語・世界12地域通貨に対応する外貨両替機で、全国650カ所以上に設置されている。GENDA傘下のGiGO店舗のうち、インバウンド需要の多い「GiGO大阪道頓堀本店」「GiGO秋葉原3号館」「GiGO渋谷宮益坂」「GiGO福岡天神」など全国14店舗(2024年11月末時点)にはすでに設置済みだった。

買収の狙いとしては、スタッフが常駐しない「ミニロケ」事業と外貨両替機事業のビジネスモデルが類似している点が挙げられている。省人化された無人設置型サービスという共通項を軸に、両社間でのノウハウ共有によるシナジーが期待された。訪日外国人観光客(インバウンド)数の拡大が続く市場環境の中、アミューズメント施設への外貨両替機の追加設置を通じた相乗効果を狙った買収と言える。

5. 国内ロールアップM&A(2025年)―ゲームセンター69店舗を取得

国内では、ドラマ(吸収分割)、ハローズ、ゲームグース、エスアイアミューズメント、ユーイングなど複数社を相次いで子会社化する「ロールアップ型M&A」を展開。2025年2月〜5月にかけての5件で、合計69店舗を取得した。

このうちハローズは、阪和興業株式会社から株式100%を取得する形で子会社化されたもので、全国でアミューズメント施設「ハローズガーデン」53店舗、ミニロケ63箇所を展開していた(2024年12月時点)。GiGOブランドの限定プライズ投入や、店舗数拡大に伴うゲーム機・プライズの購買力向上によるシナジーが狙いとされている。

セグメント別の状況(2026年1月期第3四半期累計)

主力の「エンタメ・プラットフォーム事業」の売上高は1,097億5,600万円(前年同期比57.9%増)、セグメント利益は124億6,600万円(同38.8%増)。国内アミューズメント事業は新規出店17店舗とM&Aによる取得店舗69店舗の両輪で伸長し、海外事業もNENの通期寄与に加え、2025年7月のPlayer OneとBarberioの子会社化、VENUplusからのミニロケ事業譲受などにより大きく拡大した。

まとめ:買収額の大小より「割安に買えているか」

GENDAのM&A史を振り返ると、0円で成立したセガエンタテインメント買収から、260億円規模のPlayer One買収まで、金額のスケールは大きく異なる。しかし共通しているのは、対象企業の売上高・EBITDA・店舗網といった実態に対して、買収価格が見合っているかを厳密に見極める姿勢だ。GENDA自身も「割安に買えているかどうか」「売上高や営業利益に対して買収額が高すぎないか」を判断軸とし、EBITDA倍率(EV/EBITDAマルチプル)を重視していることを公式にも説明している。

2026年1月期だけで19件、創業から数十社規模のM&Aを積み重ねてきたGENDAにとって、次の焦点は「連続的な非連続な成長」をいかに利益成長に転換していくかだろう。会計上は一時的な減益局面が続いても、調整後EBITDAやキャッシュフローの拡大が続く限り、この連続M&A戦略の評価は今後も市場から注目され続けそうだ。


出所・参考記事

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