コメ兵ホールディングス、資産管理アプリ「cashari」運営のガレージバンクを16億円で完全子会社化

ディール概要

リユース大手のコメ兵ホールディングス(東証スタンダード、証券コード2780)は2026年7月16日、モノ資産の管理・活用アプリ「cashari(カシャリ)」を開発・運営するガレージバンク株式会社(東京都港区)の発行済株式100%を取得し、子会社化すると発表した。取得株式数は46万7,864株、株式取得価額は16億円。アドバイザリー費用など8,000万円を含む取得総額は概算16億8,000万円で、株式譲渡は2026年7月29日付で実行され、同日付でグループ会社化が完了した。

項目内容
買収企業コメ兵ホールディングス(東証スタンダード:2780)
対象企業ガレージバンク株式会社(東京都港区)
取得株式比率100%(発行済株式全数)
株式取得価額16億円
取得総額(概算)16億8,000万円(アドバイザリー費用等8,000万円を含む)
発表日2026年7月16日
株式譲渡実行日2026年7月29日
2027年3月期連結業績への影響精査中

出典:日本経済新聞(2026年7月16日)、日本インタビュ新聞社(株式投資情報編集部)、ネットショップ担当者フォーラム

対象企業プロフィール:ガレージバンク株式会社

ガレージバンクは、スマートフォンひとつで持ち物の査定から現金化までを完結できるアプリ「cashari」を開発・運営する企業。画像査定と独自の与信判断技術に加え、モノを手放さずに資金化できる「セール・アンド・リースバック」の仕組みを主力サービスとしている。利用者は保有する品物を一度売却して資金を受け取った後、リース料を支払いながら同じ物を使い続け、リース期間終了後は返却または再購入を選べる仕組みで、貸付ではなく売買契約とリース契約を組み合わせた設計となっている。「cashari」は累計40万ダウンロードを突破しており、これに必要な一連のプロセスを実現するシステムの特許を軸に事業を展開してきた。

財務数値(2025年12月期実績)

項目金額
売上高10億5,306万円
営業損失△2億685万円
当期純損失△2億4,261万4,000円
純資産4,225万9,000円

同社は3期連続の営業赤字にある一方、売上高は2023年12月期の1億4,415万8,000円から2年間で約7.3倍に急拡大しており、直近の成長率の高さがうかがえる。

出典:ビジネス+IT(2026年8月、原データはガレージバンクの開示情報に基づく)

バリュエーションの目安(単純計算)

  • 株式取得価額(16億円)/直近売上高(10.5億円):約1.5倍(PSR相当)
  • 株式取得価額(16億円)/純資産(4,225万9,000円):約37.9倍(PBR相当)
  • 株式取得価額(16億円)/コメ兵HD 2026年3月期営業利益(92億8,800万円):約17.2%

いずれも売上高・純資産・買収企業の利益水準との単純な比較であり、この倍率だけで買収価格の妥当性を判断できるものではない点には留意したい。赤字企業を相応の価格で取得した背景には、後述する顧客データやシステム開発力への評価があるとみられる。

出典:ビジネス+IT「過去最高益のコメ兵、なぜ『赤字企業』を16億円で買収?」

買収企業の狙い:コメ兵ホールディングス

コメ兵HDは、ブランド・ファッション事業、タイヤ・ホイール事業、不動産賃貸事業を展開する持株会社で、中核会社の株式会社コメ兵が中古品・新品の宝石、貴金属、時計、バッグ、衣料、きもの、カメラ、楽器等の仕入・販売を手がける。2026年3月期の連結業績は、売上高2,217億700万円(前期比39.4%増)、営業利益92億8,800万円(同50.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益54億8,800万円(同14.9%増)と、いずれも過去最高を更新する大幅増収増益だった。

株式取得の背景として、コメ兵HDはリユース業界について、消費者ニーズの高まりに加え、業界再編によるM&Aの活性化や新規参入企業の増加により買取・販売競争が激化していると説明。2024年5月13日公表の中期経営計画から掲げる「将来的な売上高5,000億円」という長期成長シナリオの実現に向けた投資の一環として、本件を位置付けている。

買収の決め手としては、ガレージバンクが保有する40万人超の顧客データを活用した画像査定・与信判断技術、および市場変化に素早く適応する機動的なシステム開発・改善力を挙げている。今後は、コメ兵が持つ目利き力、買取から商品化・販売までの一気通貫のバリューチェーン、リアルタイムの相場データベースと、ガレージバンクのデジタルサービスを組み合わせることで、仕入れ・流通サイクルの活性化と流通取引総額(GMV)の非連続な成長を図る方針。

出典:コメ兵ホールディングス公式発表(2026年7月29日付)、日本インタビュ新聞社

今後の展望

ガレージバンク側は、コメ兵HDの相場データベースとの連携による査定精度・与信精度の向上に加え、取扱アイテムカテゴリーの拡充、リースバックサービスの対象領域拡大、グループのバリューチェーンと連動した新サービスの開発を進める方針を示している。なお、グループ参画後も「cashari」ブランドとサービスは継続され、既存ユーザーの契約内容や利用条件に変更はないとしている。

コメ兵HDは2027年3月期の連結業績予想として、売上高2,520億円(前期比13.7%増)、営業利益108億円(同16.3%増)を見込んでおり、成長戦略の柱の一つに「M&Aによる事業拡大」を掲げ、今後もグローバル展開とデジタル領域への投資を積極的に検討していく方針としている。今回のガレージバンク買収による2027年3月期業績への影響は現時点で精査中であり、次回決算発表での開示が注目される。

赤字が続くフィンテック系スタートアップを、伝統的なリユース事業者が「顧客データ」と「システム開発力」を評価して取得するという構図は、リユース業界とフィンテックの融合、および業界再編が進む中でのデータドリブンなM&A戦略の一例として、今後の同業他社の動向を占ううえでも参考になりそうだ。


主な参考情報源

  • 日本経済新聞「コメ兵HD、査定アプリ運営買収」(2026年7月16日)
  • 日本インタビュ新聞社「コメ兵HD、ガレージバンクを16億円で完全子会社化」
  • ネットショップ担当者フォーラム「コメ兵、モノ資産の管理・活用アプリ『cashari』のガレージバンクを買収」(2026年7月29日)
  • ビジネス+IT「過去最高益のコメ兵、なぜ『赤字企業』を16億円で買収? 狙う『売却前データ』の正体」
  • コメ兵ホールディングス公式サイト(株式取得に関する開示、2026年7月29日付)
  • コメ兵ホールディングス 2026年3月期決算短信(2026年5月14日)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です