【続報】カカクコムTOB争奪戦、EQTが3度目の価格引き上げ 1株3,570円でLINEヤフー連合に対抗 期限は8月27日まで再延長

案件概要

項目内容
対象企業株式会社カカクコム(東証プライム:2371)
買収スキームTOB(株式公開買付け)による非公開化
買収主体(本件で価格引き上げ)EQT(スウェーデン・欧州系プライベートエクイティファンド)傘下の特定目的会社「Kamgras 1」
対抗提案陣営LINEヤフー+米ベインキャピタル連合
最新TOB価格(EQT)1株3,570円(2026年8月13日発表、2回目の引き上げ)
直前のEQT価格1株3,450円(7月17日引き上げ)
当初のEQT価格1株3,000円(5月12日発表)
LINEヤフー連合の最新提示価格1株3,520円(7月29日)
TOB期間(EQT)当初〜8月17日 → 8月27日まで再延長
カカクコムの立場EQT案への賛同・応募推奨を維持
発表日2026年8月13日

対象企業プロフィール:カカクコム

カカクコムは、価格比較サイト「価格.com」と飲食店情報サイト「食べログ」を主力事業とし、求人検索の「求人ボックス」、不動産の「スマイティ」、映画情報の「映画.com」など複数の垂直メディアを運営する東証プライム上場企業(証券コード2371)である<cite index=”47-1″>求人ボックス(求人検索)、スマイティ(不動産)、映画.comなど複数のバーティカルメディアを運営している</cite>。

2026年3月期(連結、IFRS基準)業績

  • 売上収益:941億2,700万円(前期比+20.0%)
  • 営業利益:272億4,300万円(同▲7.0%)
  • 親会社所有者帰属当期利益:188億300万円(同▲6.1%)
  • 基本的EPS:95.05円
  • 自己資本比率:70.1%(前期比+4.3pt)
  • 現金同等物期末残高:465億円(前期比▲8.6%)
  • 従業員数:1,421人(前期比+40人)

出典:<cite index=”38-1″>カカクコムの2026年3月期の連結決算は、売上収益が前期比20.0%増の941億2,700万円と大幅な増収となった一方、営業利益は同7.0%減の272億4,300万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同6.1%減の188億300万円となった</cite>(BigGoファイナンス、決算短信ベース、2026年5月8日開示)。<cite index=”41-1″>経営トップは村上敦浩代表取締役社長</cite>。

セグメント別売上高(2026年3月期)

  • 食べログ事業:402億円(構成比43%)
  • 価格.com事業:236億円(同25%)
  • 求人ボックス事業:202億円(同21%)
  • インキュベーション事業:101億円(同11%)

2027年3月期・会社計画

  • 売上収益:1,145億円(前期比+21.6%)
  • 営業利益:308億円(同+13.1%)
  • 新指標「調整後EBITDA」:360億円(今回から開示開始) 出典:<cite index=”38-1″>2027年3月期の連結業績予想は、売上収益1,145億円(前期比21.6%増)、営業利益308億円(同13.1%増)と増収増益を計画している。経営上の重要指標として新たに「調整後EBITDA」を導入し、同通期予想を360億円としている</cite>(BigGoファイナンス、2026年5月8日開示)。

主要株主構成(TOB発表時点)

  • デジタルガレージ:約20.50%(筆頭株主)
  • KDDI:約17.55%
  • オアシス・マネジメント(香港のアクティビストファンド):約17.2%

出典:<cite index=”42-1″>筆頭株主のデジタルガレージは20.50%を保有し、第2位株主のKDDIは17.55%を保有、17.2%を握る香港のアクティビストファンド、オアシス・マネジメントの動向が焦点となっている</cite>(Media Innovation、2026年5月13日)。

※発行済株式数は約198,218,300株(キタイシホン集計、2026年3月期有価証券報告書ベース)。

買収主体プロフィール:EQT

EQTはスウェーデン・ストックホルムに本社を置く欧州最大級のプライベートエクイティファンドで、ナスダック・ストックホルム上場企業。<cite index=”51-1″>運用残高は2025年末時点で2,700億ユーロ(約50兆円)と、欧州系では最大規模</cite>とされる(日本経済新聞、2026年4月21日)。日本では2022年にアジア系ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)を統合し、<cite index=”51-1″>エレベーター大手のフジテックを買収したほか、2024年にはベネッセホールディングスを創業家と組みMBOで非公開化するなど、買収額が数千億円規模の大型案件で存在感を高めている</cite>(同)。今回のカカクコムTOBは、旧BPEA時代からの日本投資の延長線上にある大型ディールと位置づけられる。

LINEヤフー・ベインキャピタル連合については、LINEヤフーはソフトバンク・LINE経営統合を経て発足した国内最大級のインターネット企業で、ベインキャピタルは米国大手プライベートエクイティファンド。両社は法的拘束力のない初期提案として2026年5月7日に1株3,000円を提示した後、7月1日に正式にTOB提案(3,384円)へと切り替えた。

ディールの経緯(タイムライン)

日付動き
2026年5月7日LINEヤフー・ベインキャピタル連合、1株3,000円で非拘束の初期提案
2026年5月12日EQT、特定目的会社「Kamgras 1」を通じ1株3,000円・総額約5,900億円でTOBを正式発表。カカクコム取締役会・特別委員会が全会一致で賛同
2026年5月13日TOB開始(当初期限7月2日)
2026年5月14日LINEヤフー、ベインキャピタルと共同でEQT案より約8%高い買収案を再提示
2026年7月1日LINEヤフー・ベイン連合、TOB価格3,384円で正式提案
2026年7月17日EQT、対抗して価格を3,000円→3,450円に引き上げ(1回目)
2026年7月29日LINEヤフー連合、3,520円に引き上げて対抗
2026年8月13日EQT、3,450円→3,570円に再引き上げ(2回目)。TOB期限を8月17日→8月27日に再延長
2026年9月中旬(予定)LINEヤフー陣営、正式TOB開始の方針。EQT対応を受けさらなる価格引き上げの可能性

出典:<cite index=”31-1″>EQTは5月からカカクコムに対してTOBを進めており、当初のTOB価格は1株3,000円だった。LINEヤフーと米投資ファンド・ベインキャピタルが7月1日にカカクコムへの共同買収を正式提案したことを受け、EQTは同17日に1株3,450円に引き上げた。LINEヤフー陣営は同29日、TOBを行う場合の価格を1株3,520円としていた</cite>(読売新聞オンライン、2026年8月16日)。<cite index=”31-1″>LINEヤフー陣営は、9月中旬にもTOBを開始する方針で、EQTの対応を受けてTOB価格を引き上げる可能性もある</cite>(同)。

なお、当初のEQT提案(5月12日時点)については、<cite index=”44-1″>2026年5月12日、EQTはグループを通じてBPEA Private Equity Fund IXを介し、カカクコムに対するTOBを発表した。買付価格は1株あたり3,000円、総額約5,900億円規模で、成立後に東証プライム市場からの非公開化を目指すもので、カカクコム取締役会および独立した特別委員会は全会一致で本提案を支持・推奨した</cite>という経緯があった(ボスキャリnote、2026年5月13日)。

株主対応スキームの詳細(EQT案)

EQT案では主要株主の扱いが分かれている点が特徴的である。<cite index=”47-1″>デジタルガレージはカカクコムの創業期からの株主であり、TOBには応募せず自己株式取得を通じて売却したうえで、非公開化後の新オーナーグループに再出資する設計となっている。一方のKDDI(保有比率17.55%)はTOBには応じず自社株買いで売却するが、再出資の予定はなく、資本関係を完全に解消する判断とされる</cite>(MANDA、2026年5月24日)。自己株式取得の価格は1株2,439円と報じられており<cite index=”46-1″>デジタルガレージとKDDIが保有する株式は、カカクコムによる自己株式取得を通じて1株あたり2,439円で買い取られる方針で、この取得価格はみなし配当の益金不算入規定を意識した設計とみられる</cite>(ケータイWatch、2026年5月13日)。

※このスキーム詳細は5月時点の報道に基づくものであり、8月13日の価格再引き上げに伴い最終的な取得スキームが変更されている可能性がある点には留意されたい。

簡易バリュエーション分析

以下はTOB価格ベースの時価総額と、カカクコムの2026年3月期実績を用いた簡易的な倍率試算である。発行済株式数は約198,218,300株(自己株式控除前の概算)を使用。実際のTOB総額・倍率は自己株式の取り扱いにより変動しうる点に留意されたい。

指標EQT当初提案(3,000円)EQT最新価格(3,570円)
TOB時価総額(概算)約5,947億円約7,076億円
PSR(対売上収益941億円)約6.3倍約7.5倍
PER(対EPS 95.05円)約31.6倍約37.6倍
営業利益倍率(対営業利益272億円)約21.8倍約26.0倍

参考として、当初のEQT提案時点で報じられた総額は<cite index=”44-1″>総額約5,900億円規模</cite>(ボスキャリnote)であり、上記の概算時価総額とおおむね整合する。もっとも、当初提案時のプレミアム水準については<cite index=”44-1″>5月12日終値2,925円に対する上乗せはわずか75円(プレミアム2.6%)にとどまり、PE買収の国際標準(通常20〜40%)から見て異例の低水準だった</cite>との指摘もあった(同note、2026年5月13日)。その後の2度にわたる価格引き上げにより、当初価格からの上昇率は約19%(3,000円→3,570円)に達しており、争奪戦の激化がプレミアムを押し上げる構図となっている。

※本バリュエーションは開示financial figuresに基づく簡易試算であり、EBITDA・純有利子負債等を反映した精緻なEV/EBITDA倍率ではない点に留意されたい。カカクコムは2027年3月期予想から新たに「調整後EBITDA」(予想360億円)を開示指標として導入しており、今後はこちらを用いた倍率比較がより有効になる可能性がある。

戦略的背景・両陣営の狙い

両陣営に共通するのは、非公開化を通じたAI対応投資の加速という狙いである。<cite index=”45-1″>近年は食べログを取り巻く飲食店向け広告市場の競争激化や、価格.comの比較検索領域でのAI生成検索(AI Overview)の台頭など、コアサービスの戦略再構築を迫られており、EQT・LINEヤフー+ベインの双方ともAI実装と新規投資を非公開化で加速したい考えで、5,900億円超という買収価額にもこの「AI転換コスト」が織り込まれているとみられる</cite>(ワンキャリア転職、日付記載なし)。

株主側の思惑も対照的である。<cite index=”45-1″>デジタルガレージはカカクコムの株式売却で多額の売却益を計上できる見通しで、決済・金融事業への成長投資の原資を確保する狙いがある。一方のKDDIにとっては、連結子会社化までは目指さずファイナンシャル・リターンを確定させる意義が大きく、両社にとってこのディールは保有資産の戦略的入れ替えとして位置づけられる</cite>(同)。

EQTがカカクコム取締役会の当初の支持を得た理由については、<cite index=”47-1″>同水準の価格提示だったLINEヤフー・ベイン案が法的拘束力のない初期的提案にとどまり、デューデリジェンスも未了、資金調達のコミットメントも不十分だったのに対し、EQT案はデジタルガレージとの再出資合意を含む包括的なパッケージとして組み上がっていた</cite>ことが挙げられている(MANDA、2026年5月24日)。もっとも、LINEヤフー陣営がその後正式なTOB提案へと切り替え、価格面でも上回る提示を続けていることから、この優位性は流動化しつつある。

今後の見通し

焦点は9月中旬に予定されるLINEヤフー陣営の正式TOB開始と、その価格設定に移る。読売新聞(8月16日)は<cite index=”31-1″>LINEヤフー陣営が9月中旬にもTOBを開始する方針で、EQTの対応を受けてTOB価格をさらに引き上げる可能性がある</cite>と報じており、価格引き上げ合戦が今後も続く可能性が高い。一方で、争奪戦が長期化することで<cite index=”45-1″>カカクコムの成長戦略への着手が遅れる懸念</cite>も指摘されており(東洋経済オンライン、8月13日)、経営の空白期間がどこまで許容されるかも今後の論点となりそうだ。

また、17.2%を保有するオアシス・マネジメントをはじめとする一般株主の応募動向も、最終的な決着を左右する重要な変数として残っている。


参考文献・出典一覧

※本記事の財務・株主構成・スキーム詳細の一部は、TDnet開示資料そのものではなく報道各社(日本経済新聞、読売新聞、東洋経済オンライン等)による第三者報道に基づく。特に5月時点の株主対応スキーム(自己株式取得価格2,439円等)は8月13日時点の最新公表資料での確認が取れておらず、変更の可能性がある点にご留意いただきたい。

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