【詳報】医療系スタートアップ「MTU」16億円詐取事件 売上ゼロを8億円と偽り名門PEファンドを欺いた手口の全貌

2026年5月13日、警視庁捜査2課は医療系スタートアップ「MTU株式会社」の元代表取締役・原拓也容疑者(38)を詐欺の疑いで逮捕した。虚偽の業績を投資会社に伝え、企業売却名目で約16億3,000万円をだまし取ったとされる事件である。買収からわずか1カ月後に「重大な疑義」で解任されていた経緯や、資金調達の実績など、判明している事実関係を出所・日付付きで整理する。

事件概要

項目内容
逮捕日2026年5月13日
逮捕容疑者原拓也容疑者(38)、MTU株式会社元代表取締役
逮捕容疑期間2024年12月頃〜2025年2月頃
容疑内容詐欺(虚偽の業績説明により企業売却名目で金銭を詐取)
被害額約16億3,000万円
被害者投資会社「J-STAR」(東京都千代田区、独立系プライベートエクイティファンド)
対象株式MTU株式約1万株
捜査主体警視庁捜査2課
容疑者の対応「詐欺と言われるようなことはしていません」と容疑を否認
詐取金の使途(捜査当局の見立て)約6億円が容疑者個人の借金返済に充当されたとみられる

出典:<cite index=”78-1″>警視庁捜査2課は詐欺容疑で、東京都港区の医療関連会社「MTU」元社長・原拓也容疑者(38、渋谷区神宮前在住)を2026年5月13日に逮捕した。原容疑者は「詐欺と言われるようなことはしていません」と容疑を否認している。逮捕容疑は2024年12月〜2025年2月ごろ、医療機関向けオンラインセキュリティーサービスが完成していないにもかかわらず「約50の医療機関に導入され、売り上げの概算は約8億円」と虚偽の説明をするなどして優良企業だと誤信させ、投資会社「J-STAR」にMTU株約1万株を計約16億3,000万円で購入させたというもの。詐取金のうち約6億円は容疑者個人の借金返済に充てられていたとみられている</cite>(時事通信、2026年5月13日配信)。

MTU株式会社の概要(会社設立から買収まで)

会社基本情報 MTU株式会社は<cite index=”103-1″>2020年1月設立、本社は東京都港区浜松町の未上場スタートアップ</cite>である(セオドアアカデミー、2026年5月14日)。掲げていた事業は<cite index=”108-1″>医療機関向けセキュリティ事業、AI医療データプラットフォーム事業、医療機関向けWEBマーケティング事業の3本柱</cite>で(uniqorns、2024年4月2日)、主力製品は医療機関・歯科医院向けのメディカルセキュリティクラウドサービス「Mowl(マウル)」だった。歯科医院検索サイト「BEAUTEETH(ビューティース)」も運営していたとされる。

資金調達の実績(一次資料:MTU公式プレスリリース) MTU自身が2024年4月1日付で公表したプレスリリースによれば、<cite index=”107-1″>D4V(Design for Ventures)、Iceblue Fund有限責任事業組合、90s1号投資事業有限責任組合、伊藤嘉盛氏をはじめとするその他株主より、シリーズAラウンドで3.8億円の資金調達を実施し、これまでの累計資金調達額は約4.5億円となった</cite>(PR TIMES/MTU株式会社プレスリリース、2024年4月1日17時14分配信)。同リリースでは<cite index=”104-1″>組織人員を強化し、2025年度に50億円の売上構築を目指す</cite>との目標も掲げられていた(エキサイトニュース、2024年4月1日)。

J-STARによる買収と資本参加(一次資料:J-STAR公式発表)

買収の発表 投資会社J-STAR株式会社は、<cite index=”100-1″>2025年3月3日付のプレスリリースで、同社が投資関連サービスを提供するファンド(J-STAR No.5-A, LP等)がMTU株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:原拓也)に資本参加したことを発表した。同発表では、MTUを「医療とITを融合させ、人々の健康寿命の最大化を目指すヘルステック企業」とし、主力製品「Mowl」を通じて医療機関のITパートナーとしてセキュリティ対策や集患支援などのサービスを提供していると説明。資本参加を契機に、主力製品のさらなる販売拡大、新製品の開発、経営管理体制の強化を中心とする支援を通じ、現経営陣とともにさらなる成長を目指すとしていた</cite>(J-STAR株式会社公式リリース、2025年3月3日付)。

J-STARの企業概要 J-STARは<cite index=”95-1″>2006年創業、30人超の陣容で中堅・中小企業に軸足を置く独立系プライベートエクイティファンドで、堅実な運用と豊富な実績で業界内でも一目置かれる存在だった</cite>(ダイヤモンド・オンライン、2025年10月22日)。

買収金額 買収金額は<cite index=”103-1″>約16億3,000万円</cite>と報じられている(セオドアアカデミー、2026年5月14日、朝日新聞報道等を引用)。この金額は前掲の逮捕容疑にある被害額(約16億3,000万円)と一致する。

買収後わずか1カ月での社長解任

J-STARによる資本参加発表(2025年3月3日)から間もなく、事態は急変する。<cite index=”95-1″>MTUの買収からわずか1カ月後、J-STARは当時の社長・原拓也氏を「重大な疑義」により電撃解任した</cite>(ダイヤモンド・オンライン、2025年10月22日)。ダイヤモンド編集部の取材によれば、<cite index=”95-1″>解任の理由はM&A案件に関連した取引先数社への支払いが一時的に滞るなど、原氏の不可解な行動を巡る深刻な疑惑が買収後に発覚したためで、社内外のトラブルは警察沙汰に発展したと報じられている</cite>(同)。

なお、原氏を巡っては<cite index=”95-1″>東京美容外科の麻生泰院長に「ガイアの夜明け」や「カンブリア宮殿」への出演を持ちかけ高額の出演料を提示した疑惑により、2024年12月にSNS上で炎上した</cite>という別件も存在するが、ダイヤモンド・オンラインの取材では<cite index=”95-1″>この炎上と社長解任は無関係であり、J-STARは当該疑惑を把握した上で買収に至った</cite>と報じられている(同)。

虚偽説明の手口(報道ベース、朝日新聞の取材を引用した記事より)

原容疑者がJ-STAR側を信用させた手口について、セオドアアカデミー(note、2026年5月14日)は朝日新聞の報道を引用し、以下のように伝えている。

虚偽の業績説明 <cite index=”103-1″>J-STAR側に示された説明資料には「56の医療機関でMowlが導入されている」「年間売上は約9億円(概算8億円)」「1医療機関あたり多いときは月300万円以上の売上がある」と記載されていたが、警視庁の捜査によればこれらはすべて事実ではなく、Mowlの導入実績は1件もなく、サービスによる売上は0円だったとされる</cite>(セオドアアカデミー、2026年5月14日)。

※医療機関の導入件数については、時事通信(2026年5月13日)は「約50の医療機関」、上記noteが引用する朝日新聞報道では「56の医療機関」としており、報道により表現に若干の差異がある点に留意されたい。

「証拠」の偽装 虚偽を裏付けるため、原容疑者は複数の偽装工作を行っていたとされる。<cite index=”103-1″>まず、自身が出演した2023年11月放送のテレビ番組の映像を利用し、都内のクリニックがMowlを導入しているとして紹介させていたが、朝日新聞の取材によればこのクリニックの医院長は原容疑者から依頼を受け渡された台本に従って話しただけで、謝礼として10万円以上が支払われたとみられている。さらに、技術面の説明については無関係の知人に依頼して代わりにさせていたとされる</cite>(同)。

同記事は<cite index=”103-1″>テレビの映像、技術担当者の説明、具体的な数字を並べた資料を組み合わせることで、架空の事業が実在するように見えるよう証拠が積み上げられていた</cite>と分析している(同)。

※この手口の詳細部分は朝日新聞の報道を引用した二次情報源(note記事)に基づいており、一次の朝日新聞記事そのものは今回確認できていない点にご留意いただきたい。

逮捕までの経緯(タイムライン)

時期出来事出典
2020年1月MTU株式会社設立(東京都港区浜松町)セオドアアカデミー(2026年5月14日)
2023年11月テレビ番組でMowl導入事例として紹介(後に「やらせ」疑惑)セオドアアカデミー(2026年5月14日、朝日新聞報道引用)
2024年4月1日シリーズAで3.8億円(累計4.5億円)の資金調達を発表MTU公式プレスリリース(PR TIMES)
2024年12月原氏、東京美容外科院長への出演料提示疑惑でSNS炎上(本件詐欺とは別件)ダイヤモンド・オンライン(2025年10月22日)
2024年12月頃〜2025年2月頃J-STARに虚偽の業績を説明し、株式売却契約を締結(逮捕容疑の期間)時事通信(2026年5月13日)
2025年3月3日J-STAR、MTUへの資本参加を正式発表(買収完了)J-STAR公式プレスリリース
2025年4月頃買収から約1カ月後、原氏を「重大な疑義」により代表取締役から解任ダイヤモンド・オンライン(2025年10月22日)
2026年5月13日警視庁捜査2課、詐欺容疑で原容疑者を逮捕時事通信、日本経済新聞、テレ東BIZ 等(2026年5月13日)

今後の焦点

日本経済新聞は本件について、<cite index=”74-1″>未上場企業のM&Aが急増する中、損失を伴うトラブルに備える動きも出ており、虚偽情報が潜むリスクが改めて浮き彫りになった</cite>と論評している(日本経済新聞、2026年5月13日)。原容疑者は容疑を否認しているため、虚偽説明の有無や範囲、詐欺罪の成否については今後の捜査・司法手続きで確定されることになる。

また、J-STARの投資プロセス自体についても、ダイヤモンド・オンラインの連載「金融インサイド」内の特集『J-STAR崩壊 スタートアップ投資の罠』(2025年10月22日掲載開始)で、名門ファンドがなぜ虚偽の業績説明を見抜けなかったのかという投資判断プロセスの問題点が検証されている。同誌は買収完了からわずか1カ月での社長解任という異例の展開について、複数回にわたり追跡取材を続けている。


参考文献・出典一覧

記事の性質に関する留意事項

本記事は捜査段階の報道に基づくものであり、容疑者本人は容疑を否認している。したがって「虚偽の業績説明」等の表現は、あくまで警視庁の捜査に基づく疑いの内容であり、確定した事実ではない点にご留意いただきたい。また、手口の詳細部分(テレビ出演のやらせ疑惑、謝礼金額など)は朝日新聞の報道を引用した二次情報源(note記事)に基づいており、朝日新聞の一次記事そのものは本稿執筆時点で直接確認できていない。医療機関の導入件数(「約50」または「56」)など、報道機関によって数値表現に若干の差異がある箇所は、それぞれの出典を併記した。

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